お告げの鐘
服部 剛

久々に浅草の
老舗しにせの喫茶店「アンジェラス」に行ったら
すでに閉店していた 

「アンジェラスの鐘」は「お告げの鐘」

もう鳴らない、その鐘は
やがて記憶の風景に響くでしょう 

昭和から平成へと渡る幾年いくとせ
無数の日々に訪れた
作家は思案にふけり、珈琲カップを傾け
友と友は語らい
恋人たちの手はそっと結び合う  

レトロな三階建の
古時計のが今も聴こえそうな
懐かしい空間よ

 さようなら 

時は常に流れ
あったものはすでになく
あの友の面影さえも、今はない 

今宵は胸に懐かしい 
異国の風景の塔の中
あの鐘は揺れている 

 さようなら、さようなら

の先に、新しい日は訪れ 
あなたの思いを越えたある日
合図の鐘は、冬の澄んだ青空に響くでしょう 

その日が早くても遅くてもいい

私は物語の合図を待ち
今日もそっと
目を閉じる  






自由詩 お告げの鐘 Copyright 服部 剛 2020-11-18 23:59:03縦
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