帰路
山人

複雑な小路が入り組んだ先に
ほんの小さな広場があって
そこに君の住むアパートメントがある

夢しか見えない君を訪ねる
思い切り太っていて
あらゆることに考えが歪曲し
君はすっかり君でなくなったけれど
帰り際 私の体調を気遣った

たすけたいけれど助けられない
高速道路を追い越したり追い越されたり
ちりばめられた家々のそれぞれが
痛ましく、やかましく思え
私たちの力のなさに苛ついた

高坂サービスエリアには
大きく椅子の間隔が開けられ
君の夢の途中を断ち切るように
あらゆる物語が細い糸のようにもろく
ゆらゆらとゆれていた

長い三国トンネルを抜けると新潟県になる
かたくなに東京の夢を食む君が
帰らないと誓った新潟県は
もう夕刻を迎え
私たちはまた
どこにむかうのだろう


自由詩 帰路 Copyright 山人 2020-11-16 22:01:55縦
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