三色の流星
服部 剛

あの日、若くして病に倒れ
この世を去っていった歌姫よ

あなたは姿のない絶望の闇と向き合い 
動悸の乱れる日も
副作用で口の中が傷だらけの日も
死の不安に独り…震える深夜も
最後まで、生きることを求め
歌の道をつらぬいた

いのちの軌跡はいつか星となり
あなたの墓前で手を合わせた、数日後
命日に見上げた夜空に一瞬、光が流れた

今まで見たことのない
赤と、緑と、金色の 三色の流星
愛と、平和と、希望を歌に託した
あなたからのメッセージ

――今年で歌姫が世を去り、十五年

今もあなたが眠る墓の周囲は
色とりどりに微笑む花々が、そよ風に揺れ
墓石に刻まれた直筆の「ありがとう」は囁く 

「Live for life」

病床であなたが呟いた 最後の願い
令和に残された僕等の時代は
このまま色褪せてゆく日々じゃない 

世界にたった一人の私よ
空白のあらすじの中を
風の吹くまま、往くがいい
いつか物語の本を閉じる日まで

目を閉じれば今も夕暮れ
秋風に立つあなたの姿

かけがえのない死者と共に
〝二重の時〟を、私は生きる   






自由詩 三色の流星 Copyright 服部 剛 2020-11-14 23:25:45
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