No Worries
板谷みきょう

国際交流のアトラクションで
着物と狐面、腹掛け、手甲のステージ衣装で
唄っていた時に興味を持って
放歌後にカタコトの日本語で
声をくれた三十路前くらいの
白人男性が居た

お面に関しては
殆どの国の人が興味深く
尋ねてくるので
いつものように
「このお面は狐です。
日本では狐は
神の使いと考えられていて
その面を付けて唄うボクは
シャーマンみたいな者です。」
そして
羽織っている裾に大きな波模様の
青の着物と併せて狐面を貸して
記念写真を撮ってお捻りを頂く
唄った後のルーティーン

その後も白人男性は
興味津々とばかりに話し掛けてきて
少々厄介な感じだった

そんな中で大した意味もなく
「アメリカ人ですか?」と
尋ねたボクに
不快感を露わにきつい口調で
『オーストラリア人です。』
そう言って去って行った

「そんなに怒んなくても…。
なんて
料簡の狭い白人だ。」
そう思いながら
ホテルを後にした後日

ススキノで唄っていると
酔客に突然
『お前。朝鮮人だろっ!』

「日本人ですよ。」

『いいや。顔を見れば判る。
お前は朝鮮人だっ!』

最後まで酔客は
日本人だと認めてくれなかった

同じ黄色人の
アジア人だけれども
処理できない
複雑な思いが残ってしまったその時

オーストラリアから来たあの時の
白人の気持ちが分かったような気がした


自由詩 No Worries Copyright 板谷みきょう 2020-11-14 17:27:52
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