きのこは愛なんか歌わないけれど
そらの珊瑚

この世でいちばん大きな生き物は何だとおもう?

暮れゆくばかりの秋の問いに
ふとたちどまる
たちどまることは忘れがちだけれど
時折とても大切だから
スニーカーの靴底で
きのこをおもう

大地いっぱいに
伸びたきのこの根っこを

それは土に浮かぶふね
タイタニック号幾億隻分の
巨大なふね

アスファルトの下には土があり
そこにだって
触手を
細くはりめぐらせている
陽の目なんか見なくても

この世でいちばん大きな生き物の上を旅する
透明な手を繋いで
でたらめな歌をくちずさみながら
明日閉店する本屋へと


自由詩 きのこは愛なんか歌わないけれど Copyright そらの珊瑚 2020-11-06 12:08:25縦
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