鉱に繁る水
木立 悟






星の底の星
海を焼く夜
はるか下の白い崖には
風が暗く渦まいている


虹に近づいてゆく気持ち
虹から降りそそぐもののなかを
歩いてゆく気持ち
虹に染まる気持ち


手のひらの内の塊を晒し
左目の涙を隠すとき
晴れは巡り 雨を探す
雨は巡り 虹を探す


高い 高い
高い建物にひとり住んでいる
ここから虹を見たことがない
ここは常に 虹より高い


宝石は無い 宝石は有る
宝石はまわる くるくるまわる
指先を照らす虹とともに
くるくるくるくる くるくるまわる


雨が散るなか 人は散る
どこまでもどこまでも目をふせ うたう
静かな曇が静かに晴れ
静かな虹が水を渡る


暮れの下の土くれから
四ツ足の生きものが生まれ出て
晴れの下の水に消える
星のかたちの底の底へ


光の鳥が水辺に並び
地平から昇る虹を見ている
鳥は
鉱の上の夢をうたう



















自由詩 鉱に繁る水 Copyright 木立 悟 2020-11-03 20:04:28縦
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