優しい女
ひだかたけし

わたしはバター
熱いあなたの舌に
乗せられ転がり踊り
少しずつ少しずつ
溶かされトロリ
液状になるの

そしたら

一人悪夢に苦悩する
愛しいあなたも
いつのまにか
蕩け溶け恍惚と
真っ白な笑い顔
点火するわよ1、2、3

そしたら

黄白い炎が束の間
夜陰彷徨うあなたを
透明リアルに映し出す
私はその時にもういない
閃光一閃沈黙に蒼く震えて
無人の機械工場に響く金属音

蠢く闇 迫り来る灰色帽子の工員
あなたはどこにも逃げられない
まるでわたしの手には負えない
悪の存在が全てを無機質な虚無へ変えていく
バターのようには決して溶けない腐食水脈
地球の大地深く循環しその時を待ち構えている
あなたの脳髄には匿名性と恐怖が充満するばかり

ああ意識が遠退いていく
私はやっぱりバターだから
大人しく冷蔵庫で眠ってるわ
怨まないでね憎まないでね
これ以上何もしてあげられない












自由詩 優しい女 Copyright ひだかたけし 2020-11-02 22:22:30縦
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