此処乍ら
AB(なかほど)

  

あけぼのも
 やぶんの
  しろしのたまいも
   うんじゅがなさきどぅたぬまりる
    こうとなく
     そのこえそのこえこそ
      ものの
       のぞみたるもの
        ぐうすれば
         るりのね
          ほっすれば
           しょうのねほどに
            けしきゆらされ
             れんだいのはなのごとく

           曙も/夜分の白し宣いも/御主が情どぅ頼まりる/
           哮と哭く/その声その声こそ/ものの望みたるもの/
           遇すれば瑠璃の音/欲すれば笙の音ほどに/気色揺らされ/
           蓮台の華の如く



さきにたちたおれてもなおさらそうじゅ
 らしんばんふたつならべるぶんきてん
  さいはてにみえないはずのろくぶんぎ
   うしろてにいつのまにやらまぐのりあ
    じょうじょうのよひとまいひとにわざくら
     ゆぴてるとすぴかとたぐりつつねむる
      ののはなのさきはじめなどかすむまま
       はらのそこめをとじたままななほくと
        なにもないなにもないからくぐるもん
         のうけんのいしがきのすきはつやまね
          いろをまつわかなえうらはさいたづま
           ろくとうをさがしにはるのよるにとぶ

           先に起ち斃れてもなお沙羅双樹/羅針盤二つ並べる分岐点/
           最果てに見えないはずの六分儀/後ろ手にいつのまにやら紫木蓮/
           上々の世人舞人庭桜/木星と真珠星と手繰りつつ眠る/
           野の花の咲き始めなど翳むまま/腹の底目を閉じたまま七北斗/
           何もない何もないからくぐる門/能見の石垣の隙初山鼠/
           色を待つ若苗 裏葉 左伊多津万/六等を探しに春の夜に飛ぶ



たけざおのさきにとうかをぶらさげて
 だだこねたこもそのどてのさき
  すぎゆきてこしくるもなおすぎゆくひ 
   ぎんねむのゆめねむのきのゆめ
    にとさんとおってになくすまのわるさ
     すぎとひとあてあすなろのさとのなも
      ぐびじんそうのうつりゆくなも
       るりいろのかたばねにひをのせてとぶ 
        もうすぐみらいひかりのみらい
         のこりものこそふくあるとさきのばし
          ほんとのいみへとどかないひび
           かみのけざほしぼしのちりゆめのちり
            けいたいかいろきえるぬくもり
             たったいまきづいたふりのせきをする
              るごーるのしむかわいたのどで
               ふりむいてうめのかをかぐみかげいし
                ねはんのじうにとけゆくをまつ

           竹竿の先に燈火をぶらさげて駄々こねた子もその土手の先
           過ぎ行きて越し来るもなお過ぎ行く日 銀合歓の夢 合歓木の夢
           二兎三兎追って荷失くす間の悪さ
           杉と檜と宛 翌檜の里の名も虞美人草の移りゆく名も
           瑠璃色の堅羽に陽をのせて飛ぶもうすぐ未来 光の未来
           残り物こそ福あると先延ばし本当の意味へ届かない日々
           髪の毛座 星々の塵 夢の塵 携帯懐炉消える温もり
           たった今気付いたふりの咳をする ルゴールの沁む渇いた喉で
           振り向いて梅の香を嗅ぐ御影石 涅槃の慈雨に溶けゆくを待つ



なもなきふゆのほし
 をんなごのひゞもゆめゆめ
  ばばにもなりしおもてに
   さてもさても
    ぬさふるみこも
     きのふをとつひさきをとつひ
      のべのおくりのちかづきぬ
       みほとけわするる
        やつことなりしおひとのかほも
         つれづれながむる
          ここながら
           とはなりおもふふしもあり
            なににわらふなにになく
             むしのむへんのむしさへも
              いのちはだれをまつものか
               ひいづるしまとてひおつ
                けふはかなしとてけふかなしとくらすこそ
                 るいえふのいのりなれ

           名も無き冬の星/女児の日々も夢ゆめ/婆にもなりし面に/
           さてもさても/幣振る巫女も/昨日一昨日先一昨日/
           野辺の送りの近づきぬ/御仏忘るる/奴となりし夫の顔も/
           徒然眺むる/此処乍ら/永久なり想ふ節もあり/
           何に笑ふ何に啼く/無始の無辺の虫さへも/命は誰を待つものか/
           日出る島とて日落つ/今日儚しとて今日愛しと暮らすこそ/
           累葉の祈りなれ




  

  


自由詩 此処乍ら Copyright AB(なかほど) 2020-10-29 23:04:53
notebook Home 戻る  過去 未来