おきあがりこぼし
道草次郎

齢九十四の祖母は
早朝仏間にて
おきあがりこぼし
をつつくのが日課だそうだ
親しかった誰かや
猫やに
ゆっくりと話し掛けながら
トン と

すると
おきあがりこぼしが
カランと
不思議な音を立てる
そのカランは
必ず一日一度きり
らしい

そんな話を
先日してくれた

今年の下半期で
一番びっくりしたのは
もしかしたら
この話だったかもしれない

そんなぼくを
コスモスがわらってゆれます

「まだ二ヶ月残っているよ」と
きっと
風の秋と一緒に


自由詩 おきあがりこぼし Copyright 道草次郎 2020-10-29 06:20:02縦
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