美しくも輝きもないのに
こたきひろし

朝、車で通勤の途中の細い道端に咲いていた白い秋桜の花が何本か根本から倒れてました。
そこは大東宅建の集合住宅の駐車場の前でした。
倒れている秋桜の花の姿を見て、倒れている人の姿を想ってしまった私は、私の神経は複雑に捻じれているのかも知れませんでした。

昨夜遅く。一緒に寝ている妻がしきりにうなされていました。
それで私は眠りを覚まされました。
それが悲鳴をあげているようなすすり泣いているようなうなされ方でした。
よぼど悪い夢でも見ているのだろうと思いました。可哀相になり、悪夢からいったん開放してあげたくなりました。そしてふたたび眠りにおちれば次は良い夢を見れるかも知れないと思ったからです。

しかしやめました。たとえどんな夢を見ていたとしても、途中無理やり現実迄引き戻されたら、誰だって不機嫌になるだろうと思いなおしたからです。
夢は最後迄見て完結するのでしょう?

 美しくも輝きもない日常の繰り返しでした。
 そんな暮らしの中で私の求める幸福とは何なのか解らなくなっています。
 過去にはそれなりに波乱万丈の歴史があったような
 気がしています。
 ですが、今となっては遥か夢の彼方です。

もしかしたら幸福って、幸福感って
この美しくも輝きもない日々の底がいきなり抜け落ちて
はじめて感じるのかもわかりません。

すべてがピリオドを打たれてしまう前の
ほんの束の間に


自由詩 美しくも輝きもないのに Copyright こたきひろし 2020-10-25 07:46:56
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