立ち止まるわたしは停まる電車に乗れない
かんな

窓越しに今日を見て
誰かが向こうへ手を振ると
明日へと勝手に動きはじめて
頼んでもいないのに席が空いて
ここがあなたの場所だと告げるから
大丈夫です。
みたいな曖昧な返事が降車駅まで必要になる

隣の人と後ろの人と
つり革とシートの汚れと
自分のことを守るの下手なんだよねって
がたんごとん
あ、すみません。
日常は勝手に動くけど結果には運んでくれないから
ノイズキャンセリングでいろいろ塞ぐと
生きるのがすこし楽になる

どこか遠くへ行きたい
みたいな週末になるたび
布団から抜け出せずにスマホ画面を見るから
行き先がわからないあの電車の
停車した駅に置き忘れた
わたしの明日を回収できずにいる


自由詩 立ち止まるわたしは停まる電車に乗れない Copyright かんな 2020-10-23 19:31:40縦
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