送る日々
水宮うみ

きみの影で星がしずかに暮らしてる ときどきそっと光ってみせる



ないということには無という名があって あるものみたいに名前を呼べた



「覚えてる? 降水確率0%の日に0粒の雨が降ったこと」



言えなかった言葉を集めその上で眠る 葉っぱのあったかい色



剥製のねむる街には夜がある あの子のやさしい夢をみている



聴くたびに形や色が変わっていく 音楽たちのやわらかな声



新刊の漫画を買うときの顔が漫画みたいにパーッと明るい



もしきみから電話が来たら、史上最強の「もしもし」が言えると思う



きみのチョキがぼくの心をグッとさせ、世界をパーッと切り開いていく



いつか幸せになっても、この脳とこころで悩んでいたいと思う



違う場所、違う時間にいるひとへ、ひとつの同じ歌が流れる



夜を歩いたあの時間が今ではもう、ひかってみえてしまって、ごめん



本当は利き手が聞き手になっていて、独り言にはなっていなかった



自室にてその人のことを思い出し じたばた悶えたら、それは恋!



きみの前で私がうまく話せないのは、きみがずっと心にいるから



楽しげなきみの瞳のあかるさを、きみの全部と思ってしまった



あなたには少しだけ光があって、夜がおわるまでそこで待ってた



嬉しいと思ったことがあなたにもきちんと伝わっていてほしい



夜を歩くときの匂いや砂利を踏む音や冷たさが、好きすぎる



「うん」という言葉が句点のようになり、会話が途切れ、窓の外を見る



疲れたら文字を一旦横に置いて言葉のないキャッチボールをしよっ♡



雨上がり 光を反射した涙たちが、きらきらと笑っている



もういない誰かのことをきみと書き あなたと呼んで、その人と暮らす



もう二度と行けないことはわかってたけど、「また行こう」と笑顔で言った



だれもが鼻歌で絵を描きクレヨンで音を奏でているんだよずっと



ぼくたちの頭の中にはたくさんの夜がある 手を振った人がいる



今日の晩ご飯はきっとカレーだな カレーの匂いがめっっっっっちゃするから



すこし陽気な雨の日のかたつむり きみが明るい表情をする



あのころの未来を懐かしんでいる そんな未来に夏が重なる



いつまでも、大人になっても大切で、切っても切れない記憶があった



言葉がぼくを大切にしてくれたから ぼくは言葉を大切にしたい



いまはもう話をすることのできない人と、話をしていたこと



言葉のなかに埋まってる星空を見つけたときは、写真送るね



短歌 送る日々 Copyright 水宮うみ 2020-10-07 11:20:15
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