暮れるのがはやい
そらの珊瑚

白くてぼんやりしている一日
読みかけの本は表紙から冷えていく
犬はどこどこ毛を生え換わらせるから
死んで右往左往している夏の毛を集めて
新しい子犬として
毛糸玉に魂を吹きいれる魔法の息を

遠く 草刈り機のうなり
どこかに行くわけでもなさそうなのに
命はみな急ぎ足
刈られていく
夏だった草たちの
死んでいく名前のない熱
時折
石にぶつかった刃の金属音が混じる
欠けたその石のかけらが
ひそかに子犬を傷つけ
小さな血を流したとしても
それに気づくには
暮れるのがはやい
とてもはやいね


自由詩 暮れるのがはやい Copyright そらの珊瑚 2020-09-30 15:36:14縦
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