鈴虫によせて その2
すいせい

    

    母




触れることが
ないのであれば
なくことはなかった


どんなに言葉を尽くしても
そこには夜があるばかりで
ひろわれるもの、ひろうもの
いずれも擦り合うことはなかった


舞うようにしむけられた
細い髪が
無数の雨のように
したたって


告げられるのであれば告げて
秋の瞬きだとしても
伸ばせるのなら伸ばして
しまえばよかったと
ただ手招くように
芒は耳をうしなった


静かに震えている
鈴虫の翅をむしる
うしなってしまえば
うしなうことはないから
おやすみを言うよりたやすく
無言のうたは身を焦がして


もう寒い季節がくる
くちびるにほのおを
灯し
陽炎は静かにきえた
悴む手に息を吹きかけて


自由詩 鈴虫によせて その2 Copyright すいせい 2020-09-24 02:50:31縦
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