夏が繊細さを手放すとき秋は虫の音を抱きしめる
かんな

ある日の繊細さが
風鈴の音の揺らぎで夏を作り出したように
きっかけという名を
古ぼけた電話帳で探したときに
故郷につながる道の霧が晴れていった

生まれてきたという引き金は
生きてきたという検索履歴に
数え切れない予測変換を生みだす

悲しみを拾うように
苦しみを掬うように
恐れを包むように
怒りを放つように

これからと書いてしあわせと続けることに
ためらいを覚える違和感を置き去りにしていけたら
秋のはじまりは夜の静けさに共鳴する虫の音を
あたたかく抱きしめるだろう


自由詩 夏が繊細さを手放すとき秋は虫の音を抱きしめる Copyright かんな 2020-09-21 23:09:29
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