コロナ小説
花形新次

登場人物が
全員テレワークで
やり取りする
新時代小説を連載します

『テレワーク殺人事件』

「もしもし、もしもし、もしもし」
「・・・・・・・」
何度も問い掛けたが、彼は無言だった。
「何故なんだ?どうして答えてくれない?」
私はモニターに向かって叫んだ。
「えーと、えーと、ごめんなさい、ミュートにしてた。」
「・・・んんっ、ああ、そうか、そうだったんだ!」
私は慌てたのをごまかすように出来るだけ明るくそう言った。
するとその時ヘッドセットから大きな爆発音が聞こえた。
「おい!今の音は何だ?何があったんだ!」
しかし、爆発音の後に聞こえたのは外国人男性の
「ホーリー、ホーリー」と女性の名を呼ぶ声だった。
「さては、おまえ・・・。」
「ごめん、ごめん、今ダイハード2観てたんだよ。」
「・・・・・・。」
なんだよ、今どきダイハードって(怒)。
そう口に出す寸前にミュートをクリックしていたので
彼に聞こえることはなかった。
私は気を鎮めるためにコーヒーカップを口に運んだ。

ベランダには見たこともない
瑠璃色の鳥が舞い降りて来て
コンクリートの隙間を啄んでいた。
私はその姿を見ながら
テレワークで彼を殺すことが出来ないか、本気で考え始めていた。















自由詩 コロナ小説 Copyright 花形新次 2020-09-18 22:38:51
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