紅い満月
こたきひろし
夜
近くの家で赤子が大泣きしている
苛立って母親の叱りつける声が重なる
空には紅い満月
まるで血にずぶ濡れたボロ船みたいに浮かんでいる
この地球は
この世界は
いつ粉々に砕けるんだろうか
自暴自棄にかられた少年は
いっそ世界を道連れにしてしまいたかった
夜
近所の赤子は泣きやんだ
母親になだめすかされて
眠りについたのか
それとも泣き疲れたか
夜
空には紅い満月
満月に呼応して
少年の眼は冷たく充血していた
自由詩
紅い満月
Copyright
こたきひろし
2020-09-12 06:26:55