夜と歩いて
木立 悟






線を踏んで 花の内
爪先立ちの 花の内
花を 花を
他から多へ


掴もうとする手の反対側へ
しずくは落ちて 落ちてゆく
膝を折り 倒れる鏡
映るものは空と地ばかり


斑の陽がそそぎ
紙から分かれたたましいを濡らし
雨まじり 雨まじり
底だけがただ白い空


正と負のはざま
塵と水ふりやまず
喉の渇き 花かばう花
窓へ窓へと寄せる暮れ


平穏の後に来るものを恐れ
平穏をまるで享受できない
雨の花は揺れ
湿った光を描き


さすらい人 野に咲く頃
浮き沈みする羽のかたまり
命と命なきものの切れ端が
光に流れ 水に流れる


紙 欠片 波 虹彩
夢に積もり 夢を分ける
鏡の檻 鏡の門番
硝子の原に落ちる星


水が 夜が
水に映る夜が
ひとつの巨きな花を
巡りつづける

























自由詩 夜と歩いて Copyright 木立 悟 2020-09-05 08:46:33縦
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