ルートビア
れつら

この味がどこから来たのか
わかってほしいと思ったりしないで
黒ずんだまま 泡を噴いている
時間が経ちすぎていく
泡はゆっくりと消える

レモン型の炭酸飲料を道すがらに買って
宙に浮かぶのがトレンドなのだ
理由を口ずさむのではなく
左右に手を振ると そこにだけ
空間の亀裂が生じて
気流が流れ込み 小さな竜巻を起こす
風呂の中で 息子に実演してみせると
あんまりに口をあけておどろくので
水を飲んで むせる

ここは限られた空間だから
外はなにも変わらないけどね
すると息子は
じゃあお風呂のみずはどこから来たの?
と 問う
確かにきみが正しい
僕らがすべてまちがえていて
まちがいをまっすぐにしようと
いつも大きな力が働く
たとえば今日の夕立のように
すべてを洗い流すほど
ゆっくりの雨
でも
ときどき雷が落ちて
眠っていたひとが
起きてしまったりしてかわいそう
彼はともだちのことを言っているのだ
そして その逆もありえる
不意に打たれて
二度と寝覚めない
そういう道に流れ込むことも

息子が眠ってから
飲もうと思っていたウイスキーを
排水口にながす
魚たちがよっぱらってしまうだろうか
それともわたくしの
甘くて重い想像力をわらうだろうか
ほんとうのことを教えて

おおきくなった息子が
あなぼこの途中でひっかかってる
よく見えないけど
きみの命が大切だよ
どうして
どうしようもなく
どうして





自由詩 ルートビア Copyright れつら 2020-08-29 21:57:30
notebook Home