夢茜
ひだかたけし

熱風が
うねっている
この真昼
哀しい顔した
少年が
西へ駆けてく
汗ぬぐい
父さん母さん
追いかけて
遠ざかる後ろ背
ゆらゆらと
陽炎の揺れ
儚くて
終いに涙が
溢れても
ぐんぐんぐんぐん
追いかける
意志だけは
変わらずに
哀しい顔した
少年の
顔はもう
クシャクシャで
消え行く父母の
後ろ背に
ただひたすらに
追いすがる

 父さん母さん何処居るの?
 僕は此処で生きてるよ

哀しい顔した
少年は
今や一人
取り残され
祈るように
そう呟く
日はもう暮れ
涼風が
暮れ残った
西空を
静かに静かに
吹き抜けて
太陽の残光が
せりあがり
哀しい顔した
少年を
夢見る茜に
染め上げる

















自由詩 夢茜 Copyright ひだかたけし 2020-08-29 20:32:15
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