ゆうやけのくに
カマキリ

自転車を押す君が単線を渡ると
図ったかのように踏切が鳴り出した
いつものようにぼくは何もつかめないから
警戒色みたいな棒に文字通り遮断された
蜃気楼の中から電車が見えてきた
向こうの君は張り付いたスカートを大げさになおしながら
轟音と熱風に遮られていった
あの口角がつりあがっているのを想像しながら
電車がまた蜃気楼に帰っていくのを見送ると
おそらく仏頂面だと分かる後ろ姿が
少しだけ遠くなっていた
追いかけようかどうしようか
この道を行くしかないのだけれど


自由詩 ゆうやけのくに Copyright カマキリ 2020-08-21 20:15:42
notebook Home 戻る