はまなす
Giovanni

海が見たい とつぶやいた
あなたは今日の今頃は
白いベル付きの
ドアの向こう

あなたののこした
たった一つの
小麦色の帽子をもって
記憶の底の海へ行こう

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さびれた海水浴場に
はなますの花が咲いた

あなたのように
やさしく
はかなく
いじましい
甘く酸っぱい実を付けた

海風が
麦わら帽子を
さわさわ揺らす

いつかあなたに
であったときのように
白い雲が
かすみのように
空走る

さびれた海水浴場に
はなますの花が咲いたよ

あなたはいない
僕は ひとり
せつなく
くるおしく
小さな赤い実のように

2008.8


自由詩 はまなす Copyright Giovanni 2020-08-20 09:33:15
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