フラグメンツ カタログNo.91~120
AB(なかほど)




91
同じ月の夢に 
ニャー
   と哭く


92
過ぎゆく夏を見ているのでしょうか
こちらでもようやく
蜩の声が聞こえてきました


93
君に伝えたいことがある
君に伝えたいことがある
君に伝えたいことがある


94
帰りのカフェで君を思い出した
つまり、それも
かげろう


95
あいちゃんは漁港へと走り出す
地べたに残された
線香花火があと3本


96
風にかざせば
どんな楽しいことを
思いださせてくれるのでしょう


97
つなぐいのち
三線 半鐘 笛 の音
  三線 半鐘 笛 の音


98
感じるままを確かめるまで
横たわったままの夏は
まだ終われない


99
またこんなとこに戻ってまうねん
て言いながら
筏に乗ったように体を揺らす


100
欠番


101
替え玉頼むときまって
隣で苦い顔した
ヤダマサシはそんな友達


102
また夜が通り過ぎる
七つの夜が通り過ぎる
明晩は二丁目あたり


103
神田中古市場では、現在廃盤となった桃太郎侍
センサーの付いているタイプなど、圧倒的に旧
タイプが人気です。巻き戻しは効きません。


104
ほんとの私はここにいる
だからって
なにを書いてもいいわけじゃないけど


105
おじさんに聞けばすぐ答えてくれるのだろ
うけど、つまんない。腰の曲がったおばば
に問うてみると、見事に頬を染めてくれた。


106
ふわり
カンナの咲き終わる頃にはまた
微笑む顔を見せてくれますか


107
海に母なる君もいない
心はここにあって
そのほたるも海には帰れない


108
君の心の中でも
ひとつの詩が生まれるとしたら
最後の頁は白


109
ちっちゃいまるで
おわり
息を吸って吐く合間にて


110
それを耳にしない日はないというのに
ハンバーガーを食べながら
我が子にその意味を問われました


111
足早に
ものかけの実をひとつ齧って
家へ帰る


112
と鼓動がまた少しだけ速くなって
みんな飛んでけ
とんぼかげろうこおろぎ彼岸花


113
おばあは笑ってた
おばあは笑ってた
あのしわしわずるいと思った


114
本当はもうとっくに思い出してるよ
差し出された干し柿は
とても甘く


115
もう静かに積もりはじめているのだろう
流してしまうつもりの気持ちは
静かに包み込まれて


116
一口食べてどうにも
一日の終わりに
気持ちの方だけしょっぱい


117
僕はもう誰にも呼ばれないよ
アンダクェーとキジムナーは
山原に消えたよ


118
ただ笑っていただけのあの日々に
手の届かない夢なんてなかった
のかもしれない


119
孵るとこなんか誰も知らないという幸せ
マトリョーシカ マトリョーシカ
カタリ カタリ と


120
空が広がって言葉が止まって
全ては内から溢れてくるものに
震える手










自由詩 フラグメンツ カタログNo.91~120 Copyright AB(なかほど) 2020-08-12 08:03:04
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