股間を掻いたらおばあちゃん
佐々井

陽射しに刺されて目が回って
股間が痒くて泣きたくて
掻きむしってしまったなら
おばあちゃんの肩を叩いてる僕を見る

どういうことか分からなくても
おばあちゃんは、ああ、いい気持ちだねえ、てっちゃん
そう僕の名前を呼ぶのだ

おばあちゃんが冷えて小さく綺麗に畳まれて燃えていったのはもう6年も前のこと
けれど呼び出そうと思えば、いつでも呼び出すことができる
股間の痒みさえあれば

お前はそのまま股間を掻いていく人間になるつもりなのか
女性の手を引くしなやかな指こそ価値あるものなのだ
そういった討論は進んだとしても、自然というものは恐ろしいものです
熱気は股間に溜まり、繁殖する微生物たちが、かゆみを大量生産してしまう

そうしたら痒みは止まらない
おばあちゃんとまた会える
本当はこんな一心不乱に掻きむしる姿を見られるのはたまらない
けれど肩を叩かなくちゃ、ストーブで銀杏あたためよう、2人きりで紅白歌合戦見よう
おばあちゃん、楽しかったことあったよね
今はもう話せなくなって疎遠になってしまったけれど

おばあちゃん、肩を叩くよ、いつでも
おばあちゃんが、いいのなら
掻きむしるよ、色々な心の機微を乗り越えて

ジャズみたいな知らないリズムに乗ってやってくるよ
おばあちゃん、リズムの中で俺が股間掻きむしってやってくるよ
少しだけ踊ってみようよ、血だらけになる前に、少しだけ、どうか少しだけ


自由詩 股間を掻いたらおばあちゃん Copyright 佐々井 2020-08-11 01:31:26
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