炎と花の色
まーつん

銅、リチウム、カリウム
これらの金属は
ある種の状態で
炎に炙れば燃え盛るが

緑、紅色、薄紫という風に
それぞれが、違った色合いの
火を吐き出す

情熱が
その上昇気流が
人の顔から建前の仮面を吹き飛ばし、
高らかに本音を歌わせるように

炎によって、物質は
冷ややかな常態から遠のき
個性的な本質を
さらけ出すのだろうか

燃焼、燃え尽きる事
朽ちるでも欠けるでもなく
燃えるということ

熱は粒子を活動させる
熱が電子を励起させる

花を広げるように
ミクロの世界で
原子は束の間
その姿を変える

緑、紅、薄紫は
萌木、山茶花、藤の色

私たちもまた
座して動かぬうちは
種を撒かなければ
芽が出ず、幹も伸びず、葉が茂らず
どんな色の花も
咲かせることはできない

そんな、無理やりなオチを付けて
今日も、人生に躓いた自分を
立ち上がれ、と励ますのだ

走れなければ、
歩けばいい
歩けなければ
這ってでも

熟成もまた燃焼の一つ
ゆっくりとではあっても
内なる何処かで
燃えているのだから

見上げれば
まばらな星と
暗い空

コロナ禍故、遠くなった
夏の夜の花火を偲んで



自由詩 炎と花の色 Copyright まーつん 2020-08-10 11:05:55
notebook Home 戻る  過去 未来