ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 17
ジム・プリマス

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 結局、エルウッドとデーゥィは二時間近く、二人ともお爺さんの御伽話を聞く孫みたいにエドが話す日本の話に聞き入っていた。日本の音楽のことはもちろん、日本人の生活のこと習慣のこと、トロ、ウナギ、サシミ、スシ、モツニ、ヤキトリ、とかいう日本の料理がとてもおいしかった話。横須賀の夏がとても暑くて、シカゴの夏と変わらなかったことや、とにかくエドからいろいろな話を聞かせてもらった。
 エドに言わせれば、日本人はみんな一様に勤勉で、質素な生活を好み、貯蓄の額もアメリカ人なんかより多いということだった。それにアメリカ人に対しては日本人はみんな、とても親切に接してくれるそうだ。エドは日本や日本人に対してすごく好感をもっているようだった。
 最後にエドはこう締めくくった。
「よく日本人のことをアン・フェアだって言うやつがいるけど、本当はそんなことを言うアメリカ人のほうがよほどアン・フェアなのさ。同じアメリカンとしては恥ずかしいことだけどな。」エドは続けた。
「日本がアメリカに次ぐ経済大国にのし上がったのは日本人の正当な努力の積み重ねの結果さ。日本が成功したのは日本人がアメリカ人よりもチームワークを重視してビジネスをするのが得意だからだろうな。ただ、それが欠点でもある。日本人は個人プレイが苦手で、自己主張するやつが少なくて、少し考え方が保守的なところがある。だから何を考えているのかアメリカ人にはわかりにくいところがあるかも知れんな。」
 ちょうどエドが話を終えたころ、ばたばたと客が入ってきた。
「エルウッド、日本のビールを忘れないでくれよ。キリンだ、キリン・ビール。楽しみにまってるよ。」そう言いおえて、エドは仕事にかかり、デーゥィも客の注文をとりにカウンターを立った。
 エルウッドは目の前のランチのことや、腹をすかせていたことなんかすっかりと忘れていた。
 冷たくなったコーヒーとハンバーガーとサラダを食べてしまってから「ありがとうエド、とてもタメになったよ。」といったら、忙しいエドは挨拶代わりに手を上げた。エルウッドも手でそれに答えてから、店を後にした。


散文(批評随筆小説等) ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 17 Copyright ジム・プリマス 2020-08-09 14:32:32縦
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