べじたぶる短歌
道草次郎

にくしみは越えねばならぬインゲンのへた取りながら黄昏れるキッチン


人参のこうべを九谷へ救いだし霧吹きかけて待つ朝焼け


獲れたての茄子とならんでふるい茄子さもうらめしげに黒光りする


もみしだく塩漬けきゅうり腕まくりして教えては朱鷺ときとなる嫁


暗かった卯月うづきに植えた馬鈴薯ばれいしょの名はめでたくもインカのめざめ


味のないスイカのような毎日をしゃりしゃりとみだらだらと寝ろ


ピーマンを輪切りにしてもそれはまたチガウンジャナイ?と言いたげな妻


パプリカの赤と黄色がふたりして座っていればかんは静謐


土付きの牛蒡ごぼうの土を洗うとき手のひらに地の青空をみる


かき分けて森に暮らした小人すら途絶えて久しい茹でシロッコリー



短歌 べじたぶる短歌 Copyright 道草次郎 2020-08-07 23:25:28
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