ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 15
ジム・プリマス

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 次の日曜日、エルウッドは朝から手紙をしたためていた。ペンギン、キャブ、バスター、そしてバンドのメンバーにも。兄貴やレイの夢の話や、神から使わされたレガシィのことは、とりあえず伏せてはおいたが、とにかく神のお告げがあり、自分はニューヨークのハーレム合唱団の危機を救うためにニューヨークと日本に向かうことになるであろうことや、日本のブルース・スピリットが今回のミッションの鍵になりそうなこと、堅気の生活が長く続いたので、この旅や当面の生活のための費用については十分な蓄えがあるので心配しないようにということについて。
 ペンギンやキャブやバンドのメンバーたちも、エルウッドが落ち着いた生活を長く続けていることに安心しているようだったし、みんな、そのことには好意的だったから、もしこの手紙を読んだら、エルウッドは頭がおかしくなったんじゃないかなどど、余計な心配するだろうし、恐らくこのミッションに、みんなが反対するだろうことは、予想できたけど、何も言わないで、自分が仕事も辞めてアパートから姿を消したとしたら、もっと心配することは間違なかったから。ただバスターだけは、こんな手紙を読んだら一緒に連れて行けとせがむことだろう。
 バスターは今、里親のところから仕事に通っているはずだ。今でも時々、エルウッドのところへ、誤字だらけの手紙を送ってきて、手紙には、里親が自分のことを大切にしてくれるのだけど、シカゴ郊外の片田舎の小さな町や、修理工場での生活が、彼に言わせると「くそ、つまらない。」ということで、二人で逃避行を続けたルイジアナでの一連の騒動が懐かしいと書いてはあるのだけれど、通勤用に買ったバイクを乗り回したりして、結構、楽しくやっている様子だ。
 近所のドラック・ストアーで切手を買って、みんなの手紙にそれを貼り付けて、ポストに投函すると、エルウッドはアパートから一駅むこうに住んでいる、大家のマギー叔母さんところへアパートの更新を申し込みにいった。二月分か三月分かの家賃を払うから、しばらく部屋はそのままにしておいてほしいというと、彼女は快く応じてくれた。
 そんなこんなで駅からシカゴ・エキスプレスに向かうころには昼を軽く回って二時近くになっていた。エドとデーウィに別れを言おうと思っていたので、そのほうがエルウッドには都合がよかった。昼食で混んでいる時間だとろくに話もできないことはわかっていたから。
 


散文(批評随筆小説等) ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 15 Copyright ジム・プリマス 2020-08-07 21:37:20縦
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