夏の黒点のようにわたしは過去へ走る
かんな

木漏れ日の熱源には
黒ずんだ記憶をひとつ落としていく
君のなまえも季節に置き忘れていくから
自転車を漕いで走り続ける
子どものように生きたかったから
立ち止まることは
あたらしい夏の眩しさのようで
幸せは憧れるだけでもう目を細めてしまう
足もとに広がる
いっそう濃くなった陰にも
かなしみはたくさん浮かんでいる
砂浜で掴みかけた貝殻は
波に消えていくきっと何度でも
この景色の水平線の向こうに
求めているものはないと気づいたら
走っていて走るために走っていこうと
せいいっぱいに
わたしを置き去りにした


自由詩 夏の黒点のようにわたしは過去へ走る Copyright かんな 2020-08-05 13:13:24
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