イザベラのこと 1
ジム・プリマス

 現在まで女性から、心無い、哀しい非難を受けても、屈辱的な想いをさせられても、甘んじて受けて、大概の場合は、我慢して耐え忍んできた。
 はっきり言って僕の外見には、魅力は無いと思う。髪が細くなり、そのために頭は薄くなって来たし、昔から不格好に太っていたし、顔は大きな上に、目の下にはクマ、ほっぺたにはシミがあるし、決して女性からモテるタイプではないと思う、
 正直なところ、イザベラがそんな僕に何故、好意を持って接してくれたのか、僕には分からない。
 中国の留学先の大学の寮の食堂で、言葉も分からないのに、彼女は熱心に親切に暖かいお椀一杯のスープを僕に勧めてくれ、そしてそれを僕に差し出した。それが彼女との最初の出会いだった。
 それからは寮の中庭で偶然、会った時に、彼女の前で身振り手振りで待っているように頼んで、部屋に急いでとってかえして、友人にもらった柿を沢山あげたり、彼女が風邪を引いたと聞いた時は百元分の、大きな買い物袋いっぱいのお菓子(ビスケットやチョコレートやアメ)を買っておいて、それを渡そうしたら、今度はアカサカサンという僕と同じ時期に留学していた、僕より十歳年上の日本人の女性から、イザベラと同室のロシア人の友達に頼んで、イザベラにお菓子を渡せるようにとりなしてあげると言われた。
 アカサカサンとロシア人の女性とイザベラの間で、どんな話があったのかを僕は知らない。でも数日してアカサカサンに食堂にくるように電話で呼ばれて、僕が食堂に着くとアカサカサンとロシア人の女性とイザベラが、四人がけのテーブルに腰かけていて、僕はイザベラの向かい側の席に座るように勧められた。
 それから四人で食事をした後で、買っておいたお菓子をイザベラに渡して、僕とイザベラが挨拶を交わしたら、僕とイザベラはどういうわけか、そのまま、お付き合いをすることになっていた。



散文(批評随筆小説等) イザベラのこと 1 Copyright ジム・プリマス 2020-08-05 09:49:38縦
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