humming over
星 ゆり



やせっぽっちの山をひきつれて
小銭ほどの野ばらをこえます
つないでいる手というのは
ひとにぎりに残った樫の木でしょうか
ばらばら、と山の根もとをこぼし
ぼたぼた、とやまびこが線路にも
木立淡く、にぎやかにおとされます


絵付けのような海ですが
あなたが叫んでください
何億年の身じろぎは、現在地遠く
あなたは行く当てなかった岩でした
人のあおむけと
本当はあたりひとつない現実を
すべらせた
最果て吹き込む測量士


春風は得意ですか
虫のふるえを聞かせて、耳底の魚が
たとえば海鳴りというものをつくります
意味はなくとも鳥がついばみに来たりします
あなたでいう、やまびこと
よく似ているかもしれません
あたたかいことが
するどかったりすることです


どれもこれも出来合いの土や雨です
いっそ混じるほど、乳母車にみえ
太陽がうなずく、あなたたちでしょうか
あまり道を覚えないで帰ってください
知らしめるものすべては、身を戻すための
生まれたての死
あたりいちめんに育っています


春です
そのあたたかい手をはなしてください





自由詩 humming over Copyright 星 ゆり 2020-08-02 02:42:24縦
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