うだる博物館の妙
自由美学

近所に打ち放しコンクリのばかでかい博物館がある。
館内はなぜだかいっつも薄ら寒くて
無機質なあいつの心ん中みたいなんだ。
奴はそれこそ、のっぺりした四角四面の「ぬりかべ」だね。

ちょいとヘンコな奴なんだけどさ、
そんでもあいつ、超有名建築家の\"作品\"なのよ。笑


ーーー巻き貝のような円形ホール、
その壁づたいに螺旋スロープを昇っていくと
やがて奇妙な造形物に出くわす。

それは、
まさに飛び込み台のような風体の変態的オブジェ。

ホールのど真ん中からこれを見上げると、
晴天であるほど輪郭が映え、そのコントラストが美しい。
また、真夏であるほど皮肉めいておかしい。

陽射しの強い真夏日、
この条件を満たしていれば、頭上から誰が落ちて来ても絵になるんだ。

あなたが自ら飛んだにしろ、私が突き落とされたにしろ、
ふざけたつもりの誰かが足を踏み外して落ちてしまったにしろ、
自然と人間との融合アートがおのずと完成してしまうんだから。ね、

宇宙的なシグナルを感じちゃうでしょ。

暑さと逆光で目がくらんじゃうんだけど
落っこちたのが私達が知りうる限りの極めて陽気な人間、
例えば黒沢かずこであったならピューリッツァー賞もんだなって

うん。誰も共感できない。


散文(批評随筆小説等) うだる博物館の妙 Copyright 自由美学 2020-07-31 22:59:45
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