白い鴎
青色銀河団

ある朝わたしは鴎になり
中央区永代橋の橋桁から白い小さな翼をひろげとびたつ

(そのときわたしははじめて空の名前を知ることになる)


江東区東陽町一丁目三番地
古めかしいビルの窓から
しろいレースのカーテンがはためいている

(仲間たちはこの場所を[紅蓮の火に焼かれる睡蓮]と呼んでいた)


[Un certain matin je suis devenu la mouette]と呼ばれる美しいつばさのための数学が
液体となった太陽がしたたり落ちる青い波間に書かれている


わたしたちは飛びながらねむる
たったいまこの[眠りにつく瞬間]にも名前があるのだ


空間の名前を知ること
時間の名前を知ること


わたしたちは
魂の等価変換式を使用して
いまも
何万年も前に滅びた大陸を滑空しているのだ





自由詩 白い鴎 Copyright 青色銀河団 2020-07-27 23:39:50
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