純愛物語
秋葉竹



きみはときおり
溶けてしまうね……



信号機に架かる
朝の虹を
ながいあいだ眺めて
お腹から
消えていく
涼しくさわやかな風も
去っていくみたいに


海のなかの魚のようで
水色のなみだはみえづらく
だから幸いなことに
ぼくは泣いてないんだよって
口先だけで微笑んでいられる
小さな地震みたいに
心は揺れるけれど


足の裏の痛みが
最後に生きている証になった砂浜で
ふと、
さみしいクジラが打ち上げられた
現実を視てしまった
寂寥に襲われる


それは
ぼくのせいなのか
麦わら帽子をなくしてしまった
少年だった頃の
写真の中のぼくは
それでも笑っていたから


ぼくはいまは冷たい風が好き
夜の砂漠で北極星をさがす
ヒトコブラクダにも似て
溶けていなくなった
きみを探して
水色の目を濡らす



きみが溶けてしまう
わけが知りたいだけなのに……






自由詩 純愛物語 Copyright 秋葉竹 2020-07-17 05:18:06
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