血の眼で
こたきひろし

うっすらと血の滲んだ眼で
見上げた夜明けの空

朱の明星に涙がこぼれた
訳ではなくて
視界がぼやけていた
意味は不明

この心に立ち込める闇
闇は妄想へと生い茂る

私は名前を棄ててしまいたい
名前など要らない

名前があるから
呼ばれるんだ
呼ばれるから
振り返るんだ

振り返る為に
立ち止まったんだ

立ち止まったから
言葉をかけられたんだ

言葉をかけられたから
返事したんだ

誰?
知らない人

人違いでした
ごめんなさい

にわかに謝罪されて

うっすらと血の滲んだ眼で
その人を見た

血の眼になって
その人をしげしげと見詰めた


自由詩 血の眼で Copyright こたきひろし 2020-07-11 11:17:21
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