空と虹彩
木立 悟





水に押された風が
屋根の上を梳き
かがやきを降らせ
音を降らせる


光の羽の子と光の蜘蛛の子が
どうしたらいいかわからずに
ずっと見つめあったままでいる
風の螺旋が 遠く微笑んでいる


原人の背の羽の跡
飛ぶことの無かった羽の跡
冬の遊具の上から飛び立ち
戻って来ない曇の跡


見えない雨がはらはらと
冷たい痛みに降りそそぎ
夜から剥がれた夜たちが
夜から追われた夜の行方に降りつづく


そばに居るもの無く水を聴いている
過ぎるだけの曇のにおい
鍵と鍵がぶつかりあい
午後の空へ音を散らす


こがねの時間は削られて
やがて水彩の暗がりが来る
風は常に 地を踏まず
空のすべてを地に示す



















自由詩 空と虹彩 Copyright 木立 悟 2020-07-03 21:09:26
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