金魚の音
秋葉竹


夏に買った
金魚鉢は
金魚を飼うための
金魚鉢なのに、

いまではもう
青空を飼ってしまっている。

いつか知らないうちに
金魚が青空に
溶けてしまったという、
嘘みたいな嘘を彼女たちに聴いた。

だから冬のあいだずっと
金魚は生きていたのですよ、
って、
彼女たちは云い張るんだ。

ホラ、夏至も過ぎても
あなたは
微熱に悩まされているでしょう?
金魚の姿をみたくって。

でもね、
いまも深夜。

あなたが眠っているときたまに
ポチャンッ!
って、
その青空から
生きている音がするのですよ。

って、
彼女たちは嘘をつくんだ。








自由詩 金魚の音 Copyright 秋葉竹 2020-06-28 17:20:15
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