眼を開けていると見えてた顔が
こたきひろし

眼は閉じない限り
いつも何かを見ている

見ないわけにはいかない
見てしまう

誰かの顔を悟られないように
そっと視ていた

その顔が
際立って美しかったり
人並み外れて
その反対だったり

眼は休むひまがない

視界から得る情報に即座に感情が反応したり
在り来たりな風景を見るみたいに無意識になったりする

見たくない光景には
瞬間視線を反らしたり瞼を閉じてしまったり

だけど一瞬でも見てしまったら
瞼の裏側に焼き付いてしまい消せなくなるものだ

あの日
あの時
私は見てしまったのだ

偶然通り過ぎた街の景色の中で
ずっとずっと
片恋慕を寄せていたあの人が
知らない誰かと肩を寄せあって
なかむつまじく歩いていたのを

未成年だった時代の
未成熟な私の眼で

その一瞬が未だに忘れられない
長い年月が去った今も

眼にはカメラの役目がたしかにある
私の記憶のアルバムの頁から
その静止画を
いつまでも剥がせずにいるのは
なぜだろうか



自由詩 眼を開けていると見えてた顔が Copyright こたきひろし 2020-06-28 09:09:11
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