めんどり
為平 澪

挨拶から始まる朝は来ない
顔を見たなら悉く突き合うまで
さして時間はかからない

めんどり二羽の朝の風景
イラつく調理場
割れる玉子
割れない石頭

言い返さない方が利口
聞き流せば済むことなのに
ついに出る、
(お腹を痛めて産んだ子に!)を声高に
謳いあげて嗤う、めんどり

卵が先か鶏が先か、ではなく
どちらが先に口から産まれたか、
大声で喚いたかで勝利は決まる

私たちは似ている
親子だもの
鶏冠にくるコトバもタイミングも同じ

寡黙な台所
一触即発の玉子焼き
丸いフライパンの中でできる玉子焼きを
四角く丁寧に折りたたむことはできない

苛立ちは焼けたまま 
旦那様に差し出される

いつもの手間暇取らずの醤油をかければ
焦げていただろうフライパンの玉子焼きを
みりんと砂糖と塩で味付けすると
玉子焼きが黄色いままで焦げ付かない

旦那様は 調味料を全く使わない、
天然の玉子焼きの味が好きだという

が、

老いためんどりの目に じわり涙
その味付けは 私が母に習ったこと
人前で焦げた玉子焼きを出さないよう、
子供の頃に教えてもらった作り方

そんなくだらないことを
覚えていたくらいで泣くなよ
めんどりのくせに

私だって 作った玉子焼きの味が
わからなくなるよ
めんどりなのに





自由詩 めんどり Copyright 為平 澪 2020-06-27 20:50:24縦
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