無性器人間/ふたなりくん
アラガイs


波のうねりが変わり、感染から感染へと有機物の個体も変わる。超派生的な若さ。裏返る戦士たち。突起物が無い。それはまた新たな生成への第一歩だとも言われる時代。
グレーに染まる艶やかな長髪は蛇行の帯びをくりかえし、周囲に光彩を放っている。これが生まれつきの天然ならばまさに天からの贈り物なのだ。
ふたなりくんが教室に入ってくると女の子たちが途端に騒ぎたてる。彼はたちまちアイドルになる。今日は体育の授業があるのでどちらに向かうのか。彼自身のことに興味はつきない。
専守防衛とか、攻撃的なサフラン。酸味の強い葡萄の香りを携えた彼の巨大な逸物は、今日も山脈のように膨らんでいる。嗚呼、このクラスの何人の女子が虜になったことだろう。これはまるで翅のある大蛇だ。実際そんな刺青を下腹部のどこかに仕込んであるらしい。二三人のグループになると僕らは決まってその謎めいた話しを交換しながら想像を膨らませる。地上に暴発する脂肪と樹液の塊。吐き出せない思春期の悩ましい苛立ちを片手で慰めているのだった。
    さあ、これから二時間目の体育の授業がはじまる。
わが特別クラスの女の子たちはみんな綺麗に整列をして今か今かと待ち受けている。
なかにはトイレを覗きに行く何人かのグループもいた。 (トイレといっても男女一体どちらに向かへばいいのか誰も知らない。誰も知らないことを理由に男子どもはしょっちゅう賭け事をしている)
   突然廊下の右手から拍手が聞こえてきたのには喝采!。力強い手拍子の打つ音、そして口笛。同時にがっかりしたという悲鳴に近い女たちの甲高い声も。 ( ああん、やあい、)嗚呼、ふたなりくん、今日は女子学生として体育の授業に臨むのだな。半袖の白い小さな膨らみ。黒いショートパンツから長い脚が輝いてみえてくる。ぴっちりと張ったお尻を揺らしながらその声援に両手のピース!ゆっくりと教室に向かって廊下を歩いていく。みれば見事に山脈の出っ張りをなだらかな丘陵部に抑えていた。細い巻き毛が頸筋に触れる度に、いま蕾から目覚めたピンクの薔薇の花びら。それは完璧な女性だった。
  男子の今日の体育の授業は柔軟体操の予定となっている。押したり引いたり、グループになって身体を触りあうのが恒例。考えただけでも指の先から血の気が噴火しそうだ。流れ出るのはふたなりくんの、そのやわらかく落ち込んだ凹みへ。ギラついた眼に誰もが火花を散らしている。‥‥すでに何人かの男子生徒がトイレに駆け込んで行ってしまい‥‥
 
チャイムが鳴る。校庭には臨時の教師らしき姿が。ジャージーなマスク。なんだか様子が変な雲息。
      
あれ?   今日はもうひとりがふたなり先生なのだった。そうよね。がっかりだ。
こうして何人かは貞操ベルトを外す。もちろん女子たち全員も貞操ベルトを付けていた。そうか、裏を成せ。ふたなりくんが攻撃的な槍ならば僕らは楯だ。僕らには小さな突起物は無用だ。過去の人々たち、これが俗にいうペニシュリンクインバンドだ。わかるか?シーレーンの防衛隊なのだ。  続く。







自由詩 無性器人間/ふたなりくん Copyright アラガイs 2020-06-27 03:20:34
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