ずっと不安で震えていた
道草次郎

ずっと不安で震えていた

曖昧な言葉しかない世界で

曖昧な事ばかりをした

絶望など存在せず

かといって希望も無いような世界が

意味もなく立ち込めていた

間違うことから逃げ続けて

間違える力を失った

哀しみを忘れるあまり

喜びを思い出せなくなった

心はいつからか

灰色の吐き気に喩えるしかなく

体は機能を失い続けた

日々の中で

自然だけが風に吹かれていた

木々たちだけが

木漏れ日に親しかった

人が人であることはよろこびであると神が
定めたからか

わたしも親として子によろこびを届けたいと願った

風が吹いてゆくだろう

これからもこの先も

子はおそらく誰のものでもなく陽の光をただ浴びている

子はやがて呪いそして赦すだろう

風が吹いてゆく

さらされた骨の上に

風は滞らない

何かの場所や時間に



結局行き詰まったわたしは
ぼんやりと一本の電話を待っている
わたしはたぶん宇宙に謝罪し
至ってつまらない手続きを全力で行うはずだ











自由詩 ずっと不安で震えていた Copyright 道草次郎 2020-06-26 17:53:26
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