ハーメルン2丁目のコンビニ深夜2時
チアーヌ

コンビニで深夜2時おにぎりを手に取ったわたし
ラップにくるまれたそれはお赤飯のおにぎり
2つカゴに入れて白い白い床を
歩いてレジへいく
出口は透明なドア
住宅街の中煌々と明るいコンビニの
外に
ハーメルンの笛吹き男が
立っていた

わたしは自動じゃないドアを開ける
笛吹き男はそこにいる
笑いながら

わたしはコンビニのポリ袋から
おにぎりを取り出す
お赤飯のおにぎりを
笛吹き男に
差し出す

わたしはおにぎりのラップをはがす
ぴりぴりと小さな音が夜に浮かぶ
笛吹き男はおにぎりを持ったまま微笑んでいる
わたしはそのおにぎりを
喉に詰めながら
2口で食べてしまう

笛吹き男はおにぎりを食べない
そしてわたしに差し出す
わたしはそれも食べる
とてもとても
飢えていた
だから
おいしい

男が笛を吹き始めた
メロディーはd-moll
深夜の住宅街を踊りながら
笛吹き男は進む
わたしも踊りながら追いかける
悲しいメロディーなのになぜか
楽しくて楽しくて
楽しくて

気がついたらわたしの後に
たくさんの女の人が続いてる
みんな笛を聞いて
家を出てきたんだね
もう帰らなくてもいいんだよ
楽しいね
楽しいね

もう街は遠くなったね
どこにでもあらわれるコンビニの前を通り
今日も深夜2時おにぎりは売り切れた
3時半の補充を待つばかり
笛の音は心地よくわたしたちを誘うよ
踊りながら行こうよ
誰も知らないところまで行こうよ
もう誰もいないところまで行こうよ
笛吹き男と
一緒に




自由詩 ハーメルン2丁目のコンビニ深夜2時 Copyright チアーヌ 2005-04-13 20:51:58
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