隣のワタナベくんと焼きそばパン
かんな

教室で黒板を見つめていた
隣の席のワタナベくんは遅刻をしてきて
コンビニ袋からおもむろに
焼きそばパンを取り出して食べはじめた
イスを傾けて教室の後ろの壁につけてもたれていた
倫理の担当は臨時の若い女性の先生で
泣き出しそうな顔でその焼きそばパンを見つめていた
ノートに、自由。と書こうとしたら
シャープペンの芯が最後のほうで上手く出てこなかった
カチ、カチ、カチ
最寄駅の前にミスタードーナツがあって
わたしはチョコファッションが好きで
学校まで行けなくて制服でコーヒーを飲んで休んでいても
放っておいてくれるその店が好きだった
あ、ドーナツの穴は自由。ふと思った
ドーナツを一口食べたときに
これで自由は無限に広がるのか
それとも自由は形をなくして消滅するのか
考えはじめても答えは出ないまま
チョコファッションを食べおわると学校へ向かった
もう昼休みになっていて
ワタナベくんがコロッケパンを食べていた


自由詩 隣のワタナベくんと焼きそばパン Copyright かんな 2020-06-24 19:02:47
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