ソファーにこわれもの
ホロウ・シカエルボク

きみはぼくだった
ぼく以上に
ぼくをどうすればいいかわかってた
調子がいいときは
犬を放すみたいにほうっておいてくれたし
つらいときには
適度に気にかけてくれた
でもいま
きみはたったひとりになって
幾億光年も先にある背中を見せながら
ちいさな靴を穿こうとしている
かすかな衣擦れの音
そのなかに
ふう、というためいきが
混ぜこまれた気がしたのは
ぼくのあまいところだろうか
きみは立ち上がって
いちども振り返らなかった
騎士のように出て行った
ぼくはぼく以下のなにかになって
ソファーに埋葬され
午後の間しあわせな夢をみた
やぶれた手紙のようになって
とどかないものだけが鮮やかだった
雨のにおいがする
爆撃のように降り注いで
世界をかくしてくれ
かみさまはかなえてくれない
ひどくのどが渇いたけど



なにを飲んでも潤う気がしなかった


自由詩 ソファーにこわれもの Copyright ホロウ・シカエルボク 2020-06-24 01:58:13縦
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