針穴
あらい

 全部作られた嘘とも前日に描かれた言の葉とも言われる、亘り鳥になれるのか、絵空事すら入りきれない、禽は翅を身に纏う様だった。
 
 胸が痛いよ。且つと口許から乱れる赤が心に灯すもの、そう言って君は花を咲かせる、
 裸虫。赤裸々の太陽に奢れる 何も残らない今今を生きている。ねえ、誰か見つけて。だが為の道を侵して共に倒錯的愛で刺し違える。
 殺意。ひけらかす様に摘み取られる 罪深きものたちの性行為を想え、首を掠める咆哮は小さな恋の付け根部分をもぎ取って捧げた。細口の壺に一刺しの赫の必然を解いた

 本当はね、
 愛去れたい愛シタイ。信じてあげたい、それでも無駄なことはしたくない。
 全部私だけを見て 尽くして、嫌がることは避けて、どうしたって包んで。狂うまで息を齎して、終いしまいなさい。あんたを全て捧げ、思うままに察して 率いて、らくを欲しいんだよ。
 いやがるけど気にしないで喉を潰していだだきませんか。くるしいのもいたいのもどうぞ、一瞬でも永遠でも 逃れられないなら、じたばたしたって いいじゃない。嘲り笑って、罵り尽くして、総てみせあえたのなら、
 遺体。綺麗に片付けて、素知らぬ顔でわらえるの。あんたがそれで幸せなら、私。しんでも本望なの。一生記憶に残るよう散々ぶちまいてあげるからそこで待っていなさいな。
 解ホツれた糸たれて、あんたがやったんだってさ 嘲笑って、咎だけを残して消えたいね。遺った意図 愛おしく切り刻んで よもすがら未知に蒔いて 誰の目にも触れずに、踏みつける紅い煉瓦の敷石になりたいんだ。
 もうわかっただろ、みなみな興味も無さげに歩んでゆく。当たり前の道に、ささやかな礎と呪いをさずけたいんだ。

(それでも押し花ぐらいはなれるでしょうか。あなたのしおりにはなれなくても、挟み込まれ閉じられて、飽きたら、売りに出されてしまえばいいんだ。)

 ただ、みっちり詰まった壺が敷き詰められた陰に立つ。
 どいつもこいつも足を突っ込んでいることにきづいちゃあいなかった、今道の彼方に明けの空を憶えた。天道の史実を買いにゆく途中でどうやら寝てしまったらしき、路頭に迷うものは、多分身ぐるみを剥がされている。

 過去は戻せねえから無念だったか、なんて喰らい尽くしてャりたヰよなぁ。あんたの人生、狂わせてやんよ。大したことじゃない。ただのクズみたいなもの。あんたに寄生してる蛆虫みたいなもン、詰め込んでる汚物でしかない唯の肉の塊じゃあないか。今更出会ったこと、後悔するがいい。

(綺羅星は何処へ行っても見えやしないのに、方向は狂った磁石を持つ彼の一存に委ねる。その背には羽も無く、杖もない片足の常識)

 時を動かす方法は簡単なのに、ただ飽きて皆すぐに居なくなるだけで、非常に重要なことであるのに、当たり前のことは薄れていくばかり。
 楽になれないね 楽しいのにね 簡単なんだけど 面白くもない
 ただただ形が積み上がればいい。私の時がそこに見えるから、なんか生きてたみたい。
 笑っちゃうけど、こんなことでも愛している。

 蟒蛇の螺子、拳骨の取っ手を廻す仕事は誰にだってできるのに、
 羽根を作り出す時計台の時報がいつまでも聴こえないのは誰の所業か。


自由詩 針穴 Copyright あらい 2020-06-23 18:12:33
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