空を切る、斜め上からの投下
ゆるこ


この道の
最果ての夜明けで
または、
赤い月の落ちる砂漠の中心で、

裁断用のハサミで
制服のスカートを切りあおう

か細い指で、ずっしりとしたハサミを持って
瑞々しい太腿を切らないように
心を描こう
漆黒のスカートをぐちゃぐちゃにしよう


夏の匂いは、
路地裏の中華屋の室外機みたいな
むせ返るような熱い空気と
涙で蒸発した土の匂いでできている

部活棟まで香る その匂いは
私たちの青春を、とても苦いものにする

廊下を走る、誰かの彼氏
かげぼうし、女の子
ふとした瞬間の入道雲
の、隙間から落ちてくるたくさんの女子

生温い雨とともに、また 空へ舞い上がる
白いブラウスに七色の粒々を
地上から男子達がとばしてくる

地平線、その向こう

白いうさぎが飛んでいる
コンビニの袋のように、
リプトン 午後の紅茶 ミルクティー

みんな、本当の自分をしらずに
夕凪に消えてゆく
その儚さの先に、
日はまた昇っていくのだろう


自由詩 空を切る、斜め上からの投下 Copyright ゆるこ 2020-06-18 20:13:08
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