海鳴り
羽衣なつの



 毎晩、おなじ夢をみていた。 

 わたしは、丘の上にいる。神さまといる。丘のふもとは男たちで埋め尽されている。男たちは、肉に飢えている。わたしの肉を、欲している。わたしはかれらをみながら、濡れている。

 神さまは、美しい青年の姿をしている。何も着ていない。股間に、樫の木のような男根がふとぶとと屹立している。わたしはうっとりとそれをなぜ、頬ずりをし、けがらわしいことをかんがえている。

 わたしは、神さまに懇願する。ああ、神さま、わたしはけがれた娘です、わたしはあなたを冒瀆したいのです、あなたの前で濡れている、このけがれたからだを辱めてほしいのです、けがれた娘にふさわしい、永遠の痛みと辱めをお与えください。

 美しい青年の神さまは、やさしい微笑を浮かべながら、わたしをかるがると持ち上げ、わたしの両脚をおおきくひろげて、したたるほどに濡れたそれを、丘の下の男たちに示す。男たちはうめき声をあげ、のたうち回る。神さまの男根がわたしを一気につらぬく。わたしは歓喜の痛みにむせび泣く。わたしは今、地上の誰よりも美しい。

 神さまは、わたしから男根を引き抜くと、丘のふもとの男たちに、わたしを投げ与える。無数の手が、口が、男根が、美しいわたしを奪い合い、辱め、穢す。男たちの精が尽き、ひとりのこらず息絶えるまで、わたしは歓喜にむせび泣きつづける。

 今日は、その夢をみなかった。かわりに、夜の海の夢を見た。星のない空の底にくろぐろと潮が盛り上がり、うねっている。海鳴りがきこえる。わたしはいつまでもそこにいる。くろぐろとうねる潮はわたしと、ひとつになる。海鳴りがきこえる。

 わたしは目を覚ました。

 生理がきていた。






自由詩 海鳴り Copyright 羽衣なつの 2020-06-18 00:22:04
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