無限多面体
ハァモニィベル

喉から言葉を産む衝動
呪われた排泄行為
絶望は飢餓をなし
無意味を孕ませ
腹を裂く

沈黙が澄み渡り
凍らせた純真に
コンクリートが樹神こだまする

レインコートを着た存在の影が
雨の裂け目の中に姿を隠す
足跡の黒い温もりを蹴って

濡れながら彷徨う影が
遠い呼吸の彼方に漂う
いつも季節のなかに潜り込み
録音された夢を聴く
欲深き産声のような

歌う骨壺を抱えて歩く
爪先のある魂が悶える
風に飛ばされてゆく真っ白な帽子は
真っ青な画布のなかを奔り去る
砂上を媚びるように運んでいく疼きは果てしない

朝が照らしだす時間のなかを
虫が時計のように這う
景色を脱ぎ捨てるたびに舞い落ちる箱庭

溢れ出し、堆積する
言葉の塔だけが、もう遥か彼方に
瞼の向こう側に広がって聳えていた
それが消え落ちる
いま溶け落ちるように頬を伝いながら














***
〔――メビウスリングの終了の際、記念に書いた詩〕


自由詩 無限多面体 Copyright ハァモニィベル 2020-06-15 17:28:54
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