酩酊
あらい
嫌に平べったい闇を
この手で潰したかのような
柘榴を懐いた身がある
明く湿らせ ざまざま
色褪せる朱のひとつの魂が、
天へと昇る翼を
あたかも溶かしていく
もうおしまいかもしれない
戦場を眺めいる 僕 が唯一を占め
闇を纏うような月が鈍く瞬ぎ、
か細い実だけを海に残して。
時に地平線に腐り落ちた
国に帰れない松葉の腫れ足は、
錆びたまま葦に生え変わり
地に根を張り、光明を抱いた。
いずれ大樹となり
様々な命が宿り、
胎児となり依代と成る。
僕だけの神となり
しかし、なるほど
土に還るばかりでは、ソラは生まれない
それでは、希望は見えないではないか。
土壌を貪る蚯蚓はそれでも、信じている
プラスチックケースの描かれた褥でも
抜け殻のモルフォ蝶は空を魅せたとき
唸らせる瞳が、一片輝いている。
僕らを殺すために
火は降り注いだ。
そういうこと、みちたりた、人生でも。
自由詩
酩酊
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あらい
2020-06-04 21:13:19
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