日々野いずる

ネオンサインが寄せ叩く窓は
夢を見たガラスを透かす
目をこらす必要をなくす
海に飛び込む白いスカートを捨てる
青さを強調して落ちていく
太陽の向こうに夢見たまま死ねよ
怖さばかり言う
ひどいことだ、と他人事にする
夢は見ず言葉も同じだとする
ひどい事、と自分の事象にする
繭をやぶる
うまれた虫をつぶす
ひどく一般的かのように
じっと目を合わせられる
袋のがさがさと揺れる中に
半透明に透ける物を
いつ見せられるのだろう
それも良いと蓋をし遊ぶ
メリーゴーランドに自分を回し
自分を失った分だけ宙を舞う
そういう普通を知る
子供は笑うのが普通で
人はキャラクターに群がって
置き場のない風船を空に放す
飛ぶ赤いゴミとする
夢を見る
飛ぶ白いスカート
飛ぶ赤いゴミを捕まえ
大きな羽ばたきと共にのぼる
門はチケットがいる
通過できず帰る
ネオンサイン揺れる窓から光さし
ベッドに重力で沈む
ペットボトルの蓋を落とす
飲む
夢だ
全部
ネオンを振り切って走る
街は続いたまま途切れない
飛行機が一足早く墜落し
夢は終わらない
沈んでいく船より沈んでいく街に
不幸があるとあっけらかんと笑う
夢が終わりじゃなくて
願ったことは本当になった
船は沈んで落ちて
夢を語っていた
猫が鳴く
外だ
間違ってしまった
私は間違ってここにいるのだと
誰も信じていない
猫が鳴く
夢だ


自由詩Copyright 日々野いずる 2020-05-30 13:42:03
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